同じ場所を往き来していても、気付かなかったものに
突然呼ばれるように注意を向けることがあります。
今回は、半ば朽ちた民家の蔵の様子。
近くに寄りますと、重厚な造りの伝統的な蔵ですが
屋根周りが植物に占拠されつつある。
かなり寄ってみました。隣の家屋も相当浸食されている。
放置されて10年も経ったのだろうか。もっと短い期間で
こうなっているような気もする。
市内の中心あたりでもこんな状態の家屋があるのだから
全国の田舎あたりではどれくらいこうした放置家屋が
あるのだろうか。飼主には手つかずの宝物が置いてある
ように思えて仕方なく、また勿体ないと残念でもある。
そしてこのあたりには、真新しいラーメン屋があるのです。
どうも人気店らしいということで、気にしていたところ、
近くに寄る用事があったので、昼過ぎの客入りの少ない
時間帯に入店することができました。
現在のラーメンのトレンドなど全く存じ上げないのですが、
かつてあったラーメンとは違う、新しい世代の方向性を
感じます。
個性の強い、癖になるような味で来客を虜にするタイプの味
から、もうひとつ別の先を目指しているのが分かる味でした。
何が達成できているか、ではなくその商品が何を目指しているのか
が明確である場合、どんな提供品でも各部とその構成要素が目指す
方向へと整えられていることが分かります。このラーメンは、かつて
あったような、客を魅力で縛り付けるような悪魔的方向の追求に対して
明確に決別することを自覚して創作された一品であることが、まず
分かります。
その味の底にある穏やかで柔らかい野菜の甘さと、出汁や獣脂の癖が
極力緩和された味が、ひとつのアロマのようなものへと結合する
スープは、この品物をかつてのラーメンから救出して、なにかほっとする
味の汁物か、もしくは穏やかに向かい合える上質な珈琲のようなものに
向かおうとしている強い意志を感じさせます。
麺、その他具材については詳しくないので語れるだけの力量はございま
せんが、こちらの店のラーメン、見つけることができたなら是非楽しんで
頂きたい。
何の為に努力をして、何を実現できているかが明確な作品はラーメンでも
猫の玩具でも、理解者を獲得できるものです。
水のソーテール3: 悪魔オフィオモルフォス (うるたやBOOKS)クリエーター情報なしうるたや
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