真夜中に南の空を渡る火星が近年に無いくらいに輝いていたものだから、
つい作業を延ばしながら、たまにベランダに出てはあの篝火のような光
を眺めている内に朝になってしまった日。
どうもクルシャ君も、近くに居て起きていたようです。
一緒に寝ましょう、と何度か誘いに来たような覚えもありますが
クルシャ君のお誘いは奥ゆかしいので、気にならないのです。
確か140年くらい昔、火星は「西郷星」と呼ばれたことがありました。星は導き。
「狡兎死して走狗烹らる」(『史記』)。西郷が山県のような反英雄によって排されても、
いつか戻ってくるという希望がたちまち天空の神話となったのですが、自分たちで
その星を消し去って以来、この国を変えられる「古今無双の英雄」(「抜刀隊」)は
現れないのでした。この星が強く輝くとき、140年分の悔恨と懊悩を供物に受けて
英雄が現れるか否か、いまのところ疑わしいのう。
朝まで飼主の傍で待っていてくれたクルシャ君。
火星もあんなに旺盛だとなかなかの見物だよ。
星を見つめすぎて穴に落ちた哲人がいましたね。
ターレスのことかな。
飼主も足下をよく見ないから、階段で転んだり
するのです。電気、消しますよ。
アイスキュロスがどうやって死んだか知ってるかなクルシャ君、て
おい。いや、もう寝ますか。
水のソーテール5: ベッセン・ベリテン・ベリオ (うるたやBOOKS)クリエーター情報なしうるたや
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