その日、クルシャ君は俯いていました。
フードも貰ったし、寒くないし、抱き上げてもらったし
いつものように耳元で大好きだと何度も聞かされましたが
まだ足りない。
遊びだ、遊びが全く以て足りていない。
おもちゃにも飽いたし、できれば襖の向こうにいる飼主を
絡めて遊びに取り込んでしまいたいものだけど。
ひらめきましたよ!
クルシャ君は廊下から、飼主が部屋に居るのを確認して
床に目を留めます。そこには、拝観調整用と思われる金属の
蓋が嵌まっています。これをおもちゃと思い込む。
思い込む。
思い込むと、おもちゃに見えてくる。
やっぱり無理か。
でも、諦めない。
見つめていると、やはり剥ぎ取りたい。
剥ぎ取って、転がしてみたい。
床の金属にテンション上げてる猫
やたら、廊下でバタバタしているので、見に行くとクルシャ君が
こんなことしていました。
わざわざすぐ近くでこうしてはしゃいでます。
遊んでいるのが見つかると、見つかったことが恥ずかしいような
嬉しいような気持ちで挨拶にやって来ます。
こうしてクルシャ君の目論見は成功したのでしたが、目的を
達成したにもかかわらず、自分で自分にかけた暗示から
抜けられない。
こうして、飼主に構われた後でも、床の金具がしばらく
気になってしまうクルシャ君でした。
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ウルタールのうる: 巻十一 (うるたやBOOKS)クリエーター情報なしうるたや