自室であれこれやっておりますと、暇を持て余したクルシャ君が
必ずやってきます。
もちろん、例のおもちゃつまりプレゼントを持ってやってきます。
貢ぎ物であると同時に、クルシャ君の優しい気持ちが加えられ続けて
歪な形になっている、飼主の部屋への鍵なのです。
このね、ねこじゃらしの曲がってる感じが、鍵っぽいところ。
それでもクルシャ君、お土産はありがたいけれども、今は飼主
忙しいんで、あとにしてくれるかな。
いつも「あとにしてくれ」なんですよね。
飼主には義務がある、それなら、クルシャにもあります。
ねこじゃらしを持ち込んで、「相手してくださいよー」と騒いでいたクルシャ君を
宥めたところ、すぐに大人しくなったので、何か思うところでもあったのか、と
いぶかしんだり、何か胸騒ぎがしてみたりしつつ、一通りの用事が済んだ後で
背後を見ますと、和室の敷居を枕にしてクルシャ君が横たわっています。
飼主が机に向かっている間、部屋の入口からこうして飼主の背中を
ずっと見て過ごしていたらしい。入口あたりに佇んでいると、狛犬
のような、不吉な外来者を警戒して番でもしているのかと思いがち
ですが、入口を塞いでおいて飼主の背中を見続けていたのだから、むしろ
軟禁している捕虜か何かを監視している状態。
部屋の入口を守る猫
隙間から顔を出しているクルシャ君が寂しそうなので
構ってみました。ずっと遊びたい気持ちで飼主のことを
見ていたらしく、指を出したら、すぐにじゃれついてきました。
構われたい気持ちを保ったまま、飼主を思い続けることがクルシャ君の
自分に課した義務なんですね。
義務が達成されると、こうして嬉しそうな顔してくれます。
飼主は、君よりずっと嬉しいよクルシャ君。
水のソーテール1: 洗礼の天人 (うるたやBOOKS)クリエーター情報なしうるたや