興味の無いことだと、全くその分野の諸類、諸存在者について
関知しないわけで、現に面前で出会いがあっても、何らの認識どころか
知覚の事実さえ確認しないという、みっともなくもさみしいことになりがち
であります。
飼主もムシの類いにはほぼ興味ないのですが、年に一度くらいは
出会ったときに、その名前くらいは言えるようにしておきたいと
思っているので、毎年一度くらいの頻度でこのブログでもムシの話題が
出て参ります。
子供の時ほど頻繁にムシを見なくなったのは、飼主が外で遊ばなく
なったからなのか、ムシが減少してきているからなのか分かりません。
田舎でやたらに湧いて出ていたドウガネブイブイ、ちっとも見ませんね。
それでも今年の夏辺りは、僅かですが、数種類の甲虫と、蛾や蝶を見ました。
水飲みアゲハ
キアゲハだと思ったのですが、ナミアゲハでしょう。
夕立後の地面に何度も降り立っては水を飲んでいるようでした。
有翅類のうち、蛾や蝶の中の特定の種に関して、何か特別な投影ないしは
神秘感情が抱かれる、ということは人類の文化史上、何度もあったことです。
本邦では秦河勝が討伐したという古代の謎の邪教、常世教において、
一種のヤママユガのようなものを崇拝対象にしていたという記録がある。
皇極天皇3年(644年)7月、大生部多なる者が富士川周辺でムシを崇めて
騒乱を起こす。長さ四寸のムシで、蛹が神々しいとされたので、蛾では
なかろうかとされております。
ある種の蛾には一種の顕現感覚を触発するような魅力があって、稀に
文学に於いても言及されています。北杜夫なんかはオオミズアオのことを
幽界の虫であるとか表現してました。夜や未明に出会うオオミズアオの
妖精のような雰囲気には、目を留める力があります。
近代日本画界の早世の天才、速水御舟の『炎舞』なんかは、蛾の顕現感覚
を完全に理解して表現し得た作品なわけですよ。
そこで、飼主も今まで見てきた特別に引き込まれた有翅類について
思い出しながら調べてみますと、名前を知らなかったそれらたちの
情報を新たに得ることができました。
そのひとつがサツマニシキ。
単に綺麗だと思ってただけでしたが、名前も美麗だったのです。
そして、当ブログがテーマ的にも、最も推奨したいのがこちら。
キオビエダシャク、またはトータルエクリプスモス。
どちらもイヌマキに食害を与えるというので評判がよろしくない。
キオビエダシャクの胸から放射状に発している青い筋と、羽の内側に
輪を為している金色の帯は、まさに皆既日食。
羽に日蝕を負う蛾なわけです。
ところで、世の中にはやはり先達というのがあって、こうした有翅類の
好みの方向へ向けて既に道が出来ております。
飼主が好きなオナガミズアオの類いのことを、コメットモスと呼ぶらしい。
コメットモスの中でも、マダガスカル・ムーンモスは世界最大、なんて追加情報に
接してしまうと、
美しいわ世界最大だわ、どうしてくれる、って感じですか。
アメリカにいるコメットモスのActias luna(月の女神)は、マダガスカルにまで行かなくても見られそうです。
彗星だの日蝕だの、虫の話でもないようですが、これらの生き物
の周辺は天体や女神の名前であふれています。
属名はActiasで、artemis だのisis だのが揃っておりますが、総じて
羽の後部が長く伸びている。
世の中にコメットモス好きがどれだけいるか知らないが、
実は、その顔を前から見るとまた可愛らしいんですよね、とか
盛り上がるんだろうか? まずは挨拶みたいものだろう。
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