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Channel: クルシャの天地
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クルシャ君のおもちゃ使いについて

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明日はバリ祭ですね。

共和制万歳。革命からずっと後、普仏戦争でナポレオン三世が負けたと知ると
市民らがパリで蜂起。パリコミューンという短命革命政権らしきものを作った
ものの、パリ入城してきたプロイセン軍に叩かれて潰れるんですね。その間の
悲惨な有様を現地で見ていた西園寺公望が確か「共和制を唱える連中は暴徒の
煽動者でけしからんから、わが国でも見つけ次第斬首にして見せしめにしなけれ
ばならぬ」とか書いてましたね。

猫は徒党組まないので政治思想とは無関係ですね。狭義には。
ところが猫も生き物なので、主張や自己保存の活動を怠りません。生き物の活動
を人間的に洗練したものが政治だとするならば、猫にとっての政治は彼らの個別の
生存手段において観察できると考えることができます。生物学の進化理論にナッシュ均衡
適用して説明する説とかあるじゃないですか。

今回は、クルシャ君はついに政治的な意思を持つようになったのか?
猫における政治意識の萌芽は奈辺にありや?
ということについて、入口だけのお話。








猫の自己主張というと、マーキングとかおねだりとかすぐに思いつきますが、こういう
のは相手が決まっている直接的な訴求なんであって、欲求と密着しています。
要するに、操作性が無い。

もしここに、猫の主体にとって何らかの意思確立のための操作可能な媒体があって、これを
自己主張の道具とし得たならば、かなりゲーム的に政治的な意思を用いていると見做すこと
もできる。と、そう仮定します。要するに道具化されたシンボル(カッシーラー)が介在
していれば、その使い方を検証して、ここに政治的な猫を発見したなんてことが言えてしまう
かもしれないというわけです。


左端に写っている紫色のふわふわに注目。








何度かこちらでも紹介してきました、クルシャ君お気に入りのおもちゃです。
紫ネズミと呼ばれています。



普段は、蹴ったり咥えたり、人が投げるのを追いかけたりして遊んでいるだけです。

飼い主がじゃらしてみました。





好きなおもちゃに手をかける猫




紫ネズミで遊びに誘ってみましたが、そんなに食いつきません。
すっかり馴染みのおもちゃになっているので、直接的な反応をしません。

ちょっと手をかけるくらい。







ところで、シンボルの発生にはれっきとした過程というものがございまして、
およそ物神から始まります。その後、シンボル化され概念が形成され、
単なるイデオロギーに堕する。物神とは呪物崇拝の対象のことです。
何か特別な石だったり、稀に見る生き物だったり、植物だったり、人工物で
あったりもします。黄泉比良坂の神話に出てくる櫛だったり桃だったりする
わけで、ああいうのはすべて呪物の性格を持っている。
桃は食べ物ではなく、悪鬼を放逐する霊力があるという信念の拠り所にもなって
いて、信念によってではなく、呪物が信念を実現化するといったような、物に
まつわる観念の連合状態を示しているわけですね。いずれ信念は分離され、別の
シンボルである文字によって操作される概念によって扱われていくことになります。

そこで、クルシャ君が紫ネズミをどう扱っているかがようやく面白く見える
意味が見えてきたんではないかと思います。






政治的な猫がいるのかどうかから、離れてきてしまったように感じるかもしれませんが
相当我々のいる地平から遡っていかないと繋がらないのです。途中を随分と端折って
ますしね。







クルシャ君が半ば飽きながら、それでも何らかの愛着を紫ネズミに示しているならば
狩りの獲物の代用品である紫ネズミが、クルシャ君にとって別の信念や関係の喚起を
もたらしているかもしれないという期待ができます。もちろん、ぬいぐるみを子猫の
代用品に転換する猫もいますが、そういうのは見立てを変えたんであって、物神に
仕立てているわけではない。ここでよく観察していきたいのは、紫ネズミについての
クルシャ君の愛着が、彼にまつわる猫とおもちゃの二者性を超えた他の関係を内包
しているか、または内包しつつあるか、ということなわけですよ。






動物が儀礼を有するか、シンボルを操作するかと言い出すと、立論が間違っている
とかいう話になりがちですが、生物だって戦略性が語られのだから、十分に成熟した
猫が呪物を操っていたとするならば、人間の孤立した自我が自家中毒気味な隘路で
迷いがちなのを導いてくれることになるわけですよ。野蛮な物はおよそ尊大。
外部を設定しない近代哲学が尊大で野蛮なのはそのせいであります。








ちなみに、呪物を扱う生き物というと、すぐに『酉陽雑俎 』の化け狐の話なんか出てきますね。
人に狐が化ける時に、北斗星に向かって狐が立ち上がり、髑髏を頭に乗せて三回お辞儀をする。
頭上の髑髏が落ちなければシェイプシフトに成功するというのですが、想像すると可愛くて
仕方ない。なんとかして見られないものか。







余談でした。


クルシャ君のおもちゃとの関わりが最近変化してきていることが観察されたことを
報告します。

クルシャ君は紫ネズミと同じ作りの緑ネズミを持っています。
ほんの最近、彼はおもちゃを弁別して使い分けているのではないかと思われる
行動が見られています。飼主の寝床に上がって共に寝入る時、クルシャ君は
必ず紫ネズミを選択して持ってきます。特に遊ぶわけではなく、子供がベッド
に入る時にテディベアを持ち込むようにして持ってきます。
緑ネズミは台所の緑色のカーペットの上に転がっています。クルシャ君が台所
の緑色のカーペットで横になる時に、緑ネズミを運んでいることが何度かありました。








飼主に遊んでもらいたい時に、おもちゃを咥えて持って来る、そんなことはよく
ありましたが、最近クルシャ君は特定のおもちゃを別の用途に用いているのでは
ないかと思うわけです。








段成式の綴った化け狐みたいなことはあり得ないとして、クルシャ君はついに
呪物としたおもちゃを用いて、世界に何かを訴え始めたのではないかと思いつつ、
飼主は、更に成長して行動を変化させていく様子に瞠目し続けていこうと思う次第でございます。





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