Quantcast
Channel: クルシャの天地
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2253

七夕の信長

$
0
0



本日付(7月7日)報道に依れば清水寺成就院の書庫から新たに53点の古文書発見ということだ。クルシャ君の好きな信長の出した「禁書」が入ってるぞ。
新発見の点数からして、国宝「東寺百合文書群」には及ばないが極めて貴重な文書であることは間違いない。

織田弾正忠信長 まで全部信長の真筆じゃ無いぞ。本人の字じゃ無い。官名がこの時 弾正忠 だったので朝威を借りるときには官名だけで誰か分かるから、他はいらないんだよ。ちなみにこの官名は黙って四代受け継いでます。他の 弾正忠が居なければいいんです。




クルシャ君、耳だけで聞いてますね。
この話止めるか?長いぞ。






どんなやりとりがあって、この文書が出来たんですか?


そこからか。もの凄く長くなるけど、聞けないんじゃないか。こういうときは、漫才形式にしよう。この文書を書いたのは信長じゃない。いつも横にいる「右筆」というやつだ。大名は殆ど自分で公式文書など書かない。全部「右筆に」書かせている。
禁制の内容も書式も、紙も字体も当時のユニバーサルなデザイン通りになっているから、まあ調べてみれば分かる。
ここで飼主が「右筆」やるから君が素のままで何も知らない「織田信長」やってくれ。いいね。普通に右筆の言うことに返事してれば、これが出来るところをやってみよう。





おまえはいつからそこに居る?名は何じゃ?

また、遡りますな。昨年からでありましょう。我が名は武井助直であります。それよりも殿、最初の約束をお破り召さるな。右筆である武井の問いにお応え下され。良いですか、本日はいくつかの文書を発給してたもれと、洛中から願いが来ておりますので、出さねば成りません。




出さねば済まぬか?

済みませぬ。


やはり出さねばならぬか?


成りませぬ。このやりとり要りませんな。右筆の力がお分かりか? 武井は生涯に殿の隣で、八回ばかり諌言を入れております。即ち、武井の書こそ織田家の礼法ひいては天下の禁制でございます。書が違うならば、誰も従いませぬ。ようございますな。






湯漬けを食いながらでも良いか?

ちゅーるでなく、湯漬けで良いのですか?おぶ漬けですぞ。今ならば瓜や糸瓜がよう漬かっておりましょう。運ばせます故に、殿は我が話を聞いて、裁可と御印とを下され。そうそう、印は先日遊びでお作りになったアレでようござる。
ありますな。印も某が捺しまする。いいや捺し方がござる。殿のように何度も突いて遊ぶと、字が読めませぬ。





で、あるか。


端からそのようになされておれば、今までの無駄は毎度省けましょう。まず、洛中清水寺よりいつもの禁制をたもれと来ております。

やらぬ。

日付は本日から届けて、来月頭には着きましょうから九月にいたしまする。日はいつになるか分かりませぬので、入れませぬ。ようございますな。

やらぬ。


次に内容でありますが、漢の高祖の故事に習いまして法三章耳と決まっておりまする。簡便に致しませんと、読めぬ者もおりますし、解釈で乱れまする。故に三章と致します。清水寺はご存知でありましょう、殿。あの坂上田村の故地であります。ここを制するとは即ち日本最初の大将軍に倣うことに他なりませぬ。上洛を求めるならば、必ず通ることになりまする。南都から桓武帝によって入京を許された洛中随一の寺ですぞ。将軍はお嫌いか?

それでか。やっと見えた。あれであろ、義秋が尾張に居るから、浅井朝倉とアレを二條へ上げる際、禁制をたもれというか?この禁制とは、我が軍に対する嫌がらせではないか。尾張兵は三章犯し兼ねんから、大名の朱印を出せという話か。


殿、他所へ聞こえます。静かになされよ。それに足利殿は先日加冠され、名を改めて足利義昭とされましたのでその御名でお呼びなされよ。アレは随分な贅沢者と聞きましたが将軍であります。島原で総揚げした越後の田舎者が、殿より先に将軍を名乗りましたな。憚って「毘沙門天の化身」と自称しておるが、あんな痴れ者でも名乗るのが将軍でございます。
故に、将軍などと呼ばれますと浅学な百姓でも「貴公、わしを呼んだか」と斬り付けて参る。


右筆は、坊主百姓が嫌がる名を名乗るべしとわしに進言するか。

さようです。君たる者の務めであります。御悟りの捗りが尋常の者より優れたる殿に仕えることは右筆の誇りでござる。


もうよい。出来たなら読み上げよ。



は。かように書けてござる。


「禁制              清水寺の門前
一、 軍勢にあたりて、乱暴狼藉の事一、 放火また殺生の事一、 山林と木を伐採する事

右の条につき之を犯す者あらば、速やかに虜せられるその科にあたりては、乃ち殺となすことを達するくだんのごとし
              永禄十一年九月日  弾正忠 天下布武」



わしでも読める。


誰にでも読めるように書いてござる。では、清水寺に送りますぞ。最後の如件、がよう効いておりましょう。



花押連判せんで済むのが楽であるな。

印鑑のことですな。





ウルタールのうる : 巻二 (うるたやBOOKS)
明鹿 人丸うるたや 

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2253

Trending Articles