昼間、自分専用の日向取り用ベッドにて寛いでいるクルシャ君。
ベッドに伸びる彼の耳の影と背後の窓に現れた月桂樹の影が重なるように撮影しました。
木の影といいますと丸山真男の晩年の小説に出てくる孤立し、隔絶した存在のシンボルとして、彼によってのみ賦活された記憶と印象のエピソードに出てくるモチーフとして飼主はよく思いだしていますけれども、こうした個性と存在をあらぬ形で打ち立てる偉業という奴をも少しは評価する目を持ちたいですね。
成年を過ぎて主人公が見知らぬ年寄りに案内され、おまえはここで幼い頃過ごしたと言われるんだけれども記憶が無い。盆栽持って来て、光が当たると「キノカゲキノカゲ」と喜んでたもんだがと、年寄りがその場で同じ光景を見せてやると「未生以前の記憶」へと遡るように気が遠くなったなどという話だったような。
未生以前の真面目、なんてものは禅の公案くらいでしか聞いたことがないので、丸山も禅くらいはやっていたんではないか。
飼主も座ってたことありますからね。
この世は寓居であるけれども、やらねばならんことはあるのだクルシャ君も飼主もお互いに。
螢火白楊 (うるたやBOOKS)
東寺 真生うるたや