まあ、ヒューマンデベロップメント()ですわ。
2000年頃に日本の行政がインキュベーションという単語をなんだか「起業」だの「事業育成」みたいな使い方をするようになってから、古代の宗教現象を表現する時に使えなくなって、逆に「それ間違ってるよ」くらいの勢いで突っ込まれたりするから、困ってますよ。
元来は紀元前からある現象を別の意味で使われてますからね。
The Oxford Handbook of Roman Egypt
によりますと、インキュベーションとは聖牛アピスを祀るセラピウムあたりから発する宗教現象であり、ヘレニズム期にシンクレティズムを伴いながら拡大し、様式化されるようになった、とあります。
この石碑は昭和十五年あたりに全国で建てられた神社を荘厳する形式のものです。書体が全部同じなのですぐ判りますね。
皇国の医学とは、是即ちヰンキユベイシオン也
因みに、古代エジプトのアピス神殿のセラピウムまたはセラペイオンとギリシア語の治療を意味するθεραπεία(therapeia)は別であります。なんとかセラピーというときのセラピーはテラペイアです。
確か『ローマ帝国衰亡史』の冒頭部分が、エジプトからヘレニズム化した神セラピスを船でローマに運ぶシーンから始まってたと思いますね。
テラペイアの意味は?
プラトンによると、養育の意味もあるから、インキュベーションに近い。農事における、種苗のアナロジーだと説明している辞書がある。
パイデイア概念というのもあるが、その前段階みたいなものだと思ってくださいよ。
あ、いつもの面倒くさいやつだという顔してますね。判りますよ、止めます。
もののついでに石碑を写真にしてみただけなのです。
ウルタールのうる: 巻一 (うるたやBOOKS)
明鹿 人丸うるたや