とある店に置いてある鷹の置物。
同じ店にある、ラスター彩、を真似たような微妙なガラスの器
この、古道具屋の中でも値付けが張り切らないような品物ばかり
並んでいる店で、ふんわりと時間を過ごしてから、錦市場に出かけます。
市場はもうほぼ全ての店が閉店しているのですが、イベントはそこから
開始するのです。
鶏といえば若冲。
若冲の生家が錦の青物やだった、ということで、生誕300年となる今年
錦市場で若冲のイベントが行われているのです。
なんと若冲の作品を閉店後のシャッター表面にプリントしてある。
非常に精細です。凹凸ある表面にこれだけ細部を再現したプリント
が出来るようになっていたとは、存じませんでした。
『近世畸人伝』の「若冲」によれば、確かあの売茶翁なんかと仲良し
だった若冲。飼主も、そんな御仁と煎茶飲みながら高踏的な話して夜明かし
してみたいものでございます。若冲の名は『老子』が出典。
「只よりはまかり申さず候」
儒学の仁政主義がイデオロギーになっていた時代、この洛中の一部だけが
護られた聖域となって、養生の徳、ひいては個の宇宙の完成を語ることが
許され、周囲も彼らを愛してくれていたのです。このことに飼主は感謝する。
まさか、この世になって、若冲の評価が高まるとは思わなかった。
せっかくだから、ついでに長沢蘆雪にも注目して貰いたい。
いいよ、蘆雪は。
そしてなぜか、ここでは若冲以外の作品も展示してあります。
なかなか印象的。
鶏もそうだが、象を前から描く、この難しい描き方を敢えて
選んで作品に仕立てる。以前、北野天満宮の灯籠の飾り浮き彫りに
牡丹に戯れている獅子を真上から見て描いた作品がありましたが、
こうしたチャレンジングな作り方が名作の特徴です。
かなりの割合で以て失敗するのですが。
若冲の特徴のひとつが、細密な形取りでもあります。
用いた絵の具にしても、物惜しみしない。
なぜ若冲と並べてあるのか、よく分からない作品。
しかし、すぐに感動することになります。
先月で終わったイベントでしたが、この日は、通りのアーケードの天井から
スクリーンを垂らして、プロジェクターで映像を出しておりました。
2016 錦市場 伊藤若冲イベント
端唄、ですかね。作品を映し出しながら、いい雰囲気です。
先にちらりと出ましたが、こちらが感嘆した作品。
若冲だし猫だし、もうどうにでもしてくれ。
シャッターのプリントでは、どうしても肝腎の細部が
伝わりません。仮に最高技術が用いてあっても。
本物を見に行くべきですね。
市場に残る、卵焼きや焼き魚や漬け物の香りを楽しみながら
映像と音楽で稀な才能を楽しむ、観光イベントとしては申し分ないものでした。
水のソーテール9: 神の背面アフライム (うるたやBOOKS)クリエーター情報なしうるたや
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