クルシャ君、飼主はウルタ君がどこにいるのか分からなかったけど
ようやく見つけましたよ。
クルシャ君のことを第一にしているけど、ウルタ君と同じ場所で君の
御世話をすることはできない。ウルタ君はずっといっしょだけど、彼
だって用があるとき、ほんのたまに控えめに自己主張してくるだけです。
どんなに一緒であることを互いに知っていても、クルシャ君のいる世界と
ウルタ君のいる場所とは決して重ならない。
ウルタ君もよく分かっているから、クルシャ君の隣に現れたりすることは
決して無い。それでは、飼主はウルタ君をどこに探せばいいのか。
廊下はクルシャ君の場所。
ベッドはクルシャ君の場所。
ベランダにウルタ君は現れない。ソファーにも、畳にも、台所にもウルタ君の
場所はありません。ウルタ君のために、彼の遺影を飾った祭壇も、ウルタ君の
場所ではありませんでした。そこに、彼は出て来ない。
一緒に過ごしたこの部屋のどんな隅にも、ウルタ君の佇める場所はありません。
これが、私たちの選んだ秩序なんだよ、クルシャ君。
互いにずっと一緒にいるのに、出会う場所がこの世にない。彼のための祭壇で
さえ。そこは飼主がただウルタ君のことを思い出すだけの場所なのです。
でも、飼主はようやくウルタ君のために取っておかれた場所を見つけました。
そこは、この世とそして星との間にあります。
ちょいじゃれ猫
ウルタ君は、彼が過ごした場所にではなく、過ごした場所と星の領域との間に
いました。この間の空間で、ずっと飼主と一緒に過ごしています。
星の空を見て、そして部屋の中へと目を戻すまでの間に、飼主はウルタ君が
見上げている横顔を幻視できる特別な場所を見つけました。
高い空に付きだした尖塔の先、空に張り出したベランダの手すりの上、高い煙突の先、
そして風に揺れている大木の梢の先に、ウルタ君が静かに座っています。
ウルタ君は、そこでずっと星に向かって祈っています。空の中に在りながら、星を
いつも見つめています。ずっと飼主が幸せであるようにと祈っています。
飼主は、この世が辛くても薄っぺらく砂を噛むようでも、いつでも高い場所の空に接した
場所を見上げることで、そこにウルタ君を見つけることができると信じます。
ウルタ君は、そこで飼主のことを思っています。
いつでも、飼主は高い空に張り出した先端に、ウルタ君を浮かび上がらせるように幻視
することができます。
いつか、飼主はあの空に接した角度で、ウルタ君と共に針の上の広い世界を軽々と
楽しむことになるでしょう。
飼主はウルタ君と一緒に、またこの世で過ごしている後の人々のために、そこで祈ります。
雨が過ぎ去った後の、空へ向かう角度の高みを見上げるならば、飼主はウルタ君
を見つけることが出来ます。
そこで、飼主もいずれ誰かに見つけてもらうことになるでしょう。
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