クルシャ君、この数年いくらかの時間を持て余した日本中の中年達のいくらかは、特に知りたくも無かった自分の先祖のことなんかを調べたりしたかもしれない。飼主も日本中のデジタル化された史料を見たり、「遡れるだけの戸籍請求」なんてことをして、自分の先祖を調べてみたんですが、知らずに済ませたかった。
悲惨すぎる。
そして、祖父や祖母や曾祖父、父方も母方も含めた彼らから何度かうっすら聞いていた記憶に残っていたいくつかの先祖らに関する逸話が、ほぼ真実であったことを知って、打ちのめされていますよ。
飼主の友人に靖国神社、その昔東京招魂社と呼ばれていた九段の神社を蛇蝎のように嫌う者が何人も居るわけですが、彼らの信条については敬意を以て接しておりますから、特別何も思っていなかったのですけれども、飼主の先祖は、ほぼ靖国に居られるのであった。
水道橋に居た頃なんか、みたままつりの夜店をふらついたり観桜に彷徨い出たりした記憶しか無いのだが、たまに拝殿前で頭下げたりしてたら「駄目な子孫が馬鹿面見せにきおった」くらい思われてたかも知れぬ。
最後の蛇女、おたまさんの蛇芸なんか観てやんややんやしてる場合ではなかったのであったよ。
そういや、一度だけ偽右翼どもが気勢を上げるのが盛んになっていた00年代後半の終戦記念日に参拝したことがありましたけれどもとくかく暑かった。父が空母瑞鶴の乗員だったと語る老人と仲良く木陰で冷たい飲料を飲んでいましたら、この自分よりいくらか若い何も知らんような偽右翼が近寄ってきて、飼主に目を合わせて顎で「其所を除け」と鋭い目つきで指図をしてきたものですから、はいそうですか、御霊に天罰でも食らえと思いながら席を譲ったことがございましたかね。
瑞鶴乗員の息子殿は、明らかに神聖冒涜が行われたことに気付いて、とても恐れて、飼主の後を追ってこられましたけれども、偽右翼は木陰と冷水とを得て「日本は強くあるべきですよ」などと大いに意気を高めておりましたね。護国の為に散華された御霊の縁者を追い払って、何がウヨクなのか意味が分からん。
お主の先祖は護国の神なのか?どうだ? ニセモノが。
飼主はこういうとき黙って踏まれることにしていますよ。後にどうなるか、知ったことでは無い。
そういえば、何もしていないのに、「不道徳者に有徳者が罰を与えるべきではありません」とかいう抗議らしき嘆きを読んだことがあるのだが、ああいう手合いが自らを不道徳者だと自覚しとるんだろ。
いずれにしましても、東京招魂社に祀られる前に京都相国寺に墓を造られた先祖居ることが分かったので、御参りしてきます。
ウルタールのうる: 巻二十七 (うるたやBOOKS)
明鹿 人丸うるたや