クルシャ君、勉強していても見落としたり別の指摘を受けて、半日くらい衝撃で同じ言葉を繰り返して湯船で感動しながらぼんやりすることもあるもんだ。
中世女性幻視者におけるミンネとは何か?について飼主も概略知っておりますし、それはメヒティルト・フォン・マグデブルクとか『スキヴィアス』で有名なヒルデガード・フォン・ビンゲンみたいなものですよねと思っていたら、君はそれを一言で言い表さなければならないという指摘を受けて戸惑っていると(こういうことは英語で話すると必ずあります)、「それは心理学的な脱出速度だ」と言われて、頭を殴られたようになりましたね。
心理学的な脱出速度って何ですか? という話以前にもう後の説明は要らないくらいに、要を突いてきましたね。艦船なら兵器庫を直撃して誘爆、大破撃沈くらいの衝撃です。
ちょっとやばいというわけで、13世紀あたりの資料をもう一度読もうかなと思っています。
しかしあそこも飼主の見立て通りに、早々と螻蟻潰堤したようです。虚空蔵を景気良く開くと必ずああなるのだ。
ところで、クルシャ君は何をしているかといいますと、カフェテーブルの上の布を取り替えた際に、布の端から出ている糸にじゃれたりウールサッキングを始めているところなのです。
よくない習慣にしないために、飼主はクルシャ君の心の深淵をも見ます。中世の女性幻視家たちが愛の深淵を見たように。
ウルタールのうる: 巻十七 (うるたやBOOKS)
明鹿 人丸うるたや