飼主がリビングで食事を始めますと、クルシャ君が目の前にやってきて、こうした姿で御相伴してくれます。
よくできた小姓みたいなものですが、小姓はたぶん主におしりを見せないと思うね。
主?
あ、すみません。ええと、こういう話です。6世紀のローマに生きて、文化と暮らしを護ったことで今の時代の鑑となるべき聖ベネディクトゥスの功績についてグレゴリウス一世が記した伝記に依りますと聖ベネディクトゥスが貴族の子弟を傍に立たせて食事をしたがこの小姓がわがままで、師を疎む余りこの修道院長を追放しようと企んだということですが、
その話、随分長くなるでしょう?
いつものようにね。止めます。
とりあえずだな、傍に居てくれるのはとても嬉しい。お話もしましょう。
疫病と内乱で文化が廃れたときに、最も必要で貴重だとされるのが「身についた徳」だというのですよ。
その話がしたかっただけでね。
ウルタールのうる: 巻十二 (うるたやBOOKS)
明鹿 人丸うるたや