この日、飼主は痛みと目眩で倒れ込んでしまいました。
出先で無くて良かった。
それでもなかなかの鋭い目つきで飼主のことを睨んでいます。
いつもの缶詰やちゅーるや、遊びの時間に存分に相手して
あげられなかったために、不満が蓄積しているようでした。
そして、あるときから、普段と様子が違うことに気付いたようです。
飼主、苦しんでますか?
刺すような痛みと、朦朧とが繰り返し襲ってきます。起きていられない。
薬は常備薬の範囲でなんとかなりそうですよ。だから、今日はお世話できませんが
どうか、怒らずに我慢していて下さい、君の健康が悪くなっていないことだけが
飼主が眠って回復で来そうな条件なのですよ。
クルシャ君、プリンターの上で横になっています。
何を考えているのか分かりませんが、おとなしくはしてくれています。
何かおきたら、君に任せる。なんとかできるだろ。
飼主は飼主のところまでにたどり着いたものたちを守り続けて来たけれども、
君らをもう狩ろうとする相手など居ない。ほんの前まで栄えていて、突然追われたり
忘れたり、締め出されたりした君らの壁であり続けだが、もう限界なんだ。
病を得てから、回復を目指していたが、時間を戻していくことは出来ない。
誰でもが衰える。
君がおとなしくしてくれるだけで助かるのだが、もしかして、心配も
してくれているだろうか。
君に助けられる日が来るとはおもわなかったけれども
今は何より心強いよ。
などと朦朧としながら中身のないことを繰り返して、ようやく
明晰になって、二日目にクルシャ君を探しました。
この日は枕元に水と薬を置いて、横臥したり伏臥したり。
クルシャ君はベッドルームの入り口をずっ守り続けていてくれました。
倒れると、狛犬になって衛ってくれるクルシャ君でした。
ウルタールのうる: 巻三十一 (うるたやBOOKS)
東寺 真生