夏と言えば野外活動ですよクルシャ君。陽に灼けながら浜辺を走ったり、野山を跋渉し、物陰に潜んで獲物を狙ったりするのですよ。
図書館の日陰で人生の大半を過ごすような飼主の言うことですかね?
誤解だな。それは誤解だし、君は未熟なんですよ。自然に触れる、なんてもんじゃない。自然と食い合い、貪り合い、自然を対峙してこれに完敗し、自然に溶け去ってしまうという体験をしないと図書館の日陰に閉じこもれないというものだ。
外であらゆる悲惨なものたや豊かなものや痺れるほど美しいものに打ち負かされてから本にむかうものだ。プラトン先生もそう仰っておられる。
夏の遊びは独りでやったんですか?
荒々しい冒険的なものは、ほぼ独りでやりました。あの小説家のムーミンパパだって、若いときの冒険は独りでやってたんですよ。危険なことに友を巻き込んではいけない。
仲良しとの遊びはどうです?
興味津々みたいですね。
仕方ないな。夏の間の友との遊びといいますと、夕方から門前や野道で生え茂る草の花や実を摘んでみたり、虫を追ってみたり他愛ないことしてはしゃぐようなことですよ。猫のやるようなことです。
想像して固まってますね。子供だから、小さなこどもだから。しかも相手は、今想い出しますと全員が女の子でしたよ。道端や門前で夕去り時に手遊びする仲間なんて、大体女の子ですよね。
えーちなみに、飼主の仲良しは今でも他愛ないことをしてゆるゆる過ごす女の子の友達ばかりですよ。猫遊びの気怠い楽しみ方というものを知ってると、人生お得ですよ、ほんと。猫と暮らすようなものでね。
楽しい工夫をしながら道具を回したりする、そんなことがいい思い出になるのです。
ウルタールのうる総集編: 4 (うるたやBOOKS)
明鹿 人丸うるたや